この私塾「ユダヤ流人生の知恵」で皆さんに提供している講座とコーチングはハシディズムの教えに基づいていることはこれまで何度もお伝えした通りです。少なくとも私の理解では、この教えの目的は本当の自分を取り戻し意識の状態を変えることで有意義な人生にすることであると言えるかと思います。
この教えを学ぶ方法として最も一般的なのは知性を使うことです。もっと具体的には、先生が生徒たちに教えを口頭で伝えることです。単なる知識と違って、人生の知恵の場合、文字だけでは伝わらないことが多すぎます。生身の先生から口頭で教えを受けることの最大の利点の1つは、その先生の存在を感じることができるということです。別の言葉で言えば、その先生の霊的エネルギーを直感的に感じることができるということです。伝えようとしている教えを人生にどう体現しているかが霊的エネルギーとして直感的に伝わってくるのです。
これ以外の方法として説話があります。自分が伝えている教えを通して自分の意識を高めることになった賢者たちが、その人生の知恵を自らの思考・発言・行動に具体的にどう反映させているかということが子供でもすぐ分かるのが説話の力です。その力の秘密は、講義とは違って説話の場合、自我が身構え防御態勢に入ることがないので、そのメッセージが自我に浸透することになり、気づいた時には自我は茹で上がってしまうことにあるという説明をある高名なハシディズムのラビから聞いたことがあります。
多くの賢者たちの中でも、特に同世代そして後世に多大な影響を与えた Rabbi Menachem Mendel Schneerson (愛称「レベ」)にまつわる話を2つご紹介します。
生前彼はハバド派ハシディズムの7代目指導者としての激務を40年以上にもわたって務め続ける傍ら、80代になっても毎週1回日曜日に数時間ずつ、彼の深遠な知恵に基づいた助言を求めてやってくる数多くのユダヤ人だけでなく非ユダヤ人を毎回何百人と言葉を交わすということをずっと続けていました。これを見たある人がある時レベに「何時間も立ちっぱなしは疲れないか」と質問をしました。すると返ってきた答は「ダイヤモンドを数えるのに疲れる人はいるか」というものでした。
もう1つの話は、このレベがユダヤ暦の新年に吹く角笛を聞けば、子宝に恵まれなかった夫婦でも子宝に恵まれるという噂を聞きつけて、結婚後10年経っても子宝に恵まれなかったある男性が新年の祈りでレベの近くでこの角笛の音を聞こうと、レベが祈るシナゴーグに早々とやってきて、近くに席を取ります。当日祈りが始まると、レベは噂通り7本の角笛を抱えてシナゴーグにやってきます。1本目を取り出して吹こうとしたところ、まったく音が出ないのです。それで2本目を取り出して試してみたところ、また音が出ません。結局、7本どれも音が出なかったのです。自分の子供が欲しいという自分の願いが角笛をある意味窒息させてしまっているのではないかと危惧したこの男は、自分のこの願いを一旦捨てることにします。すると、レベの角笛から突然音が出るようになったのです。その後この男の妻はめでたく子供を生むことになります。1年後の新年にはお礼も兼ねて今度は夫婦で同じシナゴーグに行きます。この夫婦に子供が生まれたことを誰からも聞いていないはずのレベがこの赤ちゃんを見て言った言葉というのが、「この赤ちゃんが去年私の角笛のおかげで生まれた赤ちゃんか」だったのです。
ハシディズムの説話には古いものから新しいものまで、そして人生のおける様々なテーマについて、本当にたくさんあります。原文は主にヘブライ語で伝わっているこうした説話を少しずつ日本に皆さんにも日本語で紹介していけないものかと、目下その枠組を考えているところです。