ユダヤ流ユーモア感覚そのものをどうやって身につけるかという問題はここでは扱わないことにして(講座という形で頭を通して身につくものではないことだけは実験から明らかになりました)、一旦身についたユダヤ流ユーモア感覚がどんな人生力を培い、それによって人生の荒波をどう切り抜けていけるかを、私自身の経験を元にごく簡単にご紹介してみます。
1 不確実性への寛容さ
ユダヤ流ユーモア(より正確には東欧ユダヤ流ユーモア)が育った環境は明日の見通しがいつも曖昧だった歴史の中です。この環境にどう対処してきたかというと、不確実性に対して身構える代わりに、まず笑いで距離を取ることです。
これによって、不確実性は脅威ではなくなり、代わりに、同居人のようになり、ひいては、「分からない?まあ、それも人生。」と軽く受け止められる寛容さが培われるようになるのです。
2 混乱の中で息づく力
混乱を敵とみなさず、むしろ、その真ん中に小さな仮小屋を建てるように、混乱の中で呼吸する術が身につくようになります。
これによって、混乱に飲まれないようにならず、むしろ、混乱の中でふっと息ができる力が自然に培われるのです。
3 アイデンティティを柔らかく保つ能力
ユダヤ流ユーモアの大きな特徴のひとつは、自分自身を笑いの対象にするということです。ただし、卑下にも傲慢にも傾かない独特の柔らかさを保っています。
こうして自分自身を笑うことで、どんな効能が自分にあるかというと、それはアイデンティティの硬さをほぐすことです。硬い自己像とは折れやすいものです。それに対して、柔らかい自己像とはしなりながら成長するものです。そしてユダヤ流ユーモアはこのしなやかさを培ってくれるのです。
4 プレッシャー下での遊び心
ユダヤ流ユーモアが本領を発揮する場面は最大のプレッシャーがかかる場面こそです。
状況が重くても、そこに小さなひねりやウィンクを差し込む力とは、現実逃避ではなく、精神の護身術のようなものです。ユダヤ流ユーモアの遊び心は、重さを軽さへと変換し、圧力が魂をすり減らすのを防いでくれ、これによって、逆境の中でも内側の光を固まらせず、流動性を保ってくれるのです。